プログラム

特別講演

理学療法士としてのキャリアを彩る~これが私の歩んだ道~

田中 創 先生(福岡整形外科病院 リハビリテーション科, 愛知医科大学 医学部 疼痛医学講座)

抄録

理学療法士になり早20年が経過した.一つのことを長く続けることができない性格の私にとって,最も長く続けられていることが理学療法士の仕事である.今となっては,他業種の仕事など到底務まらないであろう.それぐらい,専門性に偏った頭でっかちの理学療法士になってしまった (この点は大いに反省すべきである).

私自身,目の前の課題に取り組んできた日々で,本講演のテーマに相応しい実績もキャリアもない.それを前提とした上で,本講演では,私がこれまで経験してきたことや専門的に取り組んできた内容について紹介させていただく.また,これを機に参加者の方々と「理学療法士としてのキャリアを彩る」ことについて発展的な議論をできれば幸いである.

講師略歴・業績

略歴

2003年 西日本リハビリテーション学院 卒業
2018年 畿央大学大学院健康科学研究科健康科学専攻 修士課程 修了
2022年 愛知医科大学大学院医学研究科臨床医学系専攻 博士課程 修了
2003年 副島整形外科病院 理学療法士
2013年 九州医療スポーツ専門学校・付属クリニック
2019年 福岡整形外科病院 理学療法士
2022年 愛知医科大学医学部疼痛医学講座 客員研究員

社会的活動

2018年〜 一般社団法人 日本ペインリハビリテーション学会 代議員
2019年〜 一般社団法人 日本運動器疼痛学会 代議員
2021年〜 一般社団法人 日本運動器理学療法学会 代議員
2021年〜 日本筋骨格系徒手理学療法研究会 代議員

研究業績

【研究キーワード】疼痛 神経科学 理学療法 変形性膝関節症 人工膝関節置換術

【筆頭論文】

Identifying participants with knee osteoarthritis likely to benefit from physical therapy education and exercise: A hypothesis-generating study.;So Tanaka, Tomohiko Nishigami, Benedict Martin Wand, Tasha R Stanton, Akira Mibu, Masami Tokunaga, Takaaki Yoshimoto, Takahiro Ushida.European journal of pain (London, England) 25(2) 485-496 2021年2月

“But it feels swollen!”: the frequency and clinical characteristics of people with knee osteoarthritis who report subjective knee swelling in the absence of objective swelling.;So Tanaka, Tomohiko Nishigami, Koji Ohishi, Kazutaka Nishikawa, Benedict M. Wand, Tasha R. Stanton, Hirofumi Yamashita, Akira Mibu, Masami Tokunaga, Takaaki Yoshimoto, Takahiro Ushida.PAIN Reports 6(4) e971-e971 2021年11月

ランチョンセミナー

症例検討を彩る

石垣智也 先生(名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科)

抄録

より良い治療やケア、円滑な在宅復帰の検討など「対象者の益の追及」を目的に、規模や形式に差はあるものの、症例検討は日々の臨床に同居している。すなわち、より良い症例検討を追及することは、理学療法を彩る重要な活動のひとつといえる。

本セミナーでは症例検討会を「対象者の問題に対して、より適切な対応を行うために議論する場」「臨床思考を言語化し他者に伝える臨床教育、あるいはそのようなスキルをトレーニングする機会」と定義し、症例検討がもつ役割と意義について解説する。端的には、症例検討は個人あるいは組織として臨床実践の質を担保し、向上させるために欠かすことのできない業務であり教育的役割を併せ持つものである。

また、部署内で行われる症例検討会を例にあげてみても、有意義な検討を行うためには様々な障壁があり運用に悩むことも多い。各施設の状況によって最適な方法は異なるものの、どのような点を意識して運用すれば良いのか。その要点についても一部紹介し、理学療法を彩るための症例検討とは何かを考える機会としたい。

講師略歴・業績

略歴

2010年 畿央大学 健康科学部 理学療法学科 卒業
2010年~2014年 医療法人社団松下会 東生駒病院
2015年 畿央大学大学院健康科学研究科 修士課程 修了(修士:健康科学)
2018年 畿央大学大学院健康科学研究科 博士後期課程 修了(博士:健康科学)
2018年~2019年 医療法人香庸会 川口脳神経外科リハビリクリニック リハビリテーション科
2019年 畿央大学 ニューロリハビリテーション研究センター(現在に至る)
2019年 名古屋学院大学 リハビリテーション学部 理学療法学科(現在に至る)

社会的活動

2016年~2022年 ガイドライン・用語策定委員会作成グループ(地域理学療法)班員
2021年~ 日本地域理学療法学会 理事
2021年~ 地域理学療法学 編集委員
2021年~ 日本老年療法学会 理事・教育委員
2021年~ 愛知県理学療法学会 渉外連携部 副部長
2022年~ Physical Therapy Research Editorial Board Member
2022年~ 理学療法学 編集委員 他

研究業績

【研究キーワード】健康科学、リハビリテーション科学、地域理学療法学、身体運動制御学

【筆頭論文】

在宅要介護高齢者の座位行動の類型化と生活機能の特徴-座位Boutを用いた試み;石垣智也, 高濱祐也, 中本貴大, 尾川達也.地域理学療法学2022年3月

Characteristics of postural control during fixed light-touch and interpersonal light-touch contact and the involvement of interpersonal postural coordination.;Ishigaki T, Yamamichi N, Ueta K, Morioka S. Hum Mov Sci. 2022 Feb

専門領域セミナー

「その人らしい暮らし」を彩る
~生きる(行き、粋、活き、意気、逝き)を支える~

安藤真次 先生(臼杵市医師会立コスモス病院)

抄録

今回の学会テーマは「理学療法に彩りを」がメインテーマになっています。

そこで、私は「その人らしい暮らし」を彩るというテーマでお話しをさせていただきます。

少し堅苦しいですが、住み慣れた所で、自分らしい暮らしを続けられる地域づくりができるよう、いまここに生きる(行き、粋、活き、意気、逝き)人々の生活を支えていくことが当院スタッフの思いです。

いかにして「住み慣れた場所」を「自分らしい暮らしが継続して生活できる場所」へと調整していくか、そこには「具体的生活の場で、そして本人の主観の中で」解決すべき課題を中心に据えて考えるという姿勢で臨んでいます。

今後、臼杵市の人口は2025年には32,961人、2030年には30,030人まで減少すると予想されています。ちなみに私が当院に就職した2000年には 45,486人でした。驚くスピードで進む高齢化と人口減少による人材不足が危惧される中、効率的で安心・安全な医療介護連携を目的に構築されたのがうすき石仏ねっとです。

うすき石仏ねっとはケーブルネットワークを活用し整備した行政イントラネットで各施設と閉域で接続し、病院や歯科医院、調剤薬局、介護施設や消防署などの参加施設間で病気、薬、検査結果等の情報を共有するシステムです。このシステムについての紹介をさせていただきます。

最後に、令和4年2月から地域包括支援センターにリハ職を配置してからの取り組みをご紹介させていただきます。この活動の紹介が理学療法士の活躍できる場のイメージ拡大の一助となればと思います。

様々な活動を重ね、つくづく私たちの仕事が人体だけでなく人生に関わる仕事だと感じます。今回の話を通して我々の仕事が社会にもたらす影響力が小さくないことを知ってください。そして共に地域づくりを担っていきましょう!!

講師略歴・業績

略歴

2000年 西日本リハビリテーション学院 卒業
2000年 臼杵市医師会立コスモス病院 入職
2004年 心臓リハビリテーション指導士
2010年 専門理学療法士 内部障害 所得
2014年 地域ケア会議推進リーダー・介護予防推進リーダー 所得
2016年 協会指定管理者 初級 所得
2017年 介護労働安定センター ヘルスカウンセラー
2018年 大分県地域包括ケアシステム 広域支援員(リーディングアドバイザー)
    臼杵市認知症を考える会 世話人
2020年 協会指定管理者 上級 所得
2021年 フレイル対策推進マネジャー 所得

研究業績

【筆頭論文】

広範囲心筋梗塞後の心不全増悪予防を目的とした活動制限について.心臓リハビリテーション第 15 巻第 2 号,279-282,2010

専門領域セミナー

「地域住民の健康な未来を彩る」

田中健一朗 先生(大分大学福祉健康科学部)

抄録

 「人生100年時代」は、長寿化がもたらす働き方やライフスタイルの変化を描いた著書『LIFE SHIFT』の作者であるリンダ・グラットン氏、アンドリュー・スコット氏が提唱した言葉で、世界中で大きな話題となった。この著書は経済、労働、教育、医療などの様々な分野で取り込まれ、本邦が抱える超高齢者社会を生き抜くための1つのヒントとなっている。また、超高齢社会にあるわが国の社会保障政策、特に医療介護政策は地域包括ケアシステムの構築、地域共生社会の現実を主軸とし、我われ、理学療法士の職域は医療中心から地域や在宅における介護や予防領域へと拡大した。これらの政策変遷により、理学療法士に求められる知識・技術等の対応力については、さらなるスキルアップ、スキルチェンジが求められている。
 このような背景の中、介護予防の職域で活躍する理学療法士は、様々な立場、視点から住民に対する理学療法を実践している。しかし、その手法については、画一したものはなく、手探りで、日々、試行錯誤しながら実施しているのが現状である。
 本講演では、その中でも「通いの場」による介護予防について解説する。「通いの場」は、地域包括ケアシステムの中で介護予防・日常生活支援の中核を担う場としての機能、さらには地域の「互助」を高める場として期待されている。その一方で、わが国の「通いの場」の普及率は低く、今後においては啓発活動や、開催しやすいシステムづくりが必要である。
 我々が実施している大分県内の一市に対する取り組みにおいても、同様の課題に直面しており、行政機関、医療機関、教育機関が一体となって、その課題解決に取り組んでいる。本講演では、「通いの場」の立ち上げから、介護予防の実践について解説させていただく予定である。本講演が通いの場の立ち上げや運営、そしてさらなる普及の足掛かりとなり、地域住民の健康な未来を彩るための一助になれば幸いである。

講師略歴・業績

略歴

2003年 長崎大学 医療技術短期大学部理学療法学科 卒業
2003年 医療法人保善会 田上(たがみ)病院 リハビリテーション科
2006年 医療法人近森会 近森病院, 理学療法科
2007年 医療法人松田会 近森オルソリハビリテーション病院 リハビリテーション科
2009年 社会福祉法人優輝会 特別養護老人ホーム恵珠苑
2015年 大分大学福祉健康科学部理学療法コース (現職)
2018年 長崎大学大学院 医歯薬学総合研究科医療科学専攻 博士課程 修了【博士(医学)】

社会的活動

【所属学会・委員等】

ヨーロッパ呼吸器学会,呼吸ケア・リハビリテーション学会,日本地域理学療法学会,等
2020年~2022年:杵築市, 杵築市介護保険事業計画並びに老人福祉計画策定委員
2018年~2019年:公益社団法人日本理学療法士学会, ガイドライン・用語策定委員会呼吸システマティックレビュー班班員

【資格】

専門理学療法士:心血管,呼吸,糖尿病   認定理学療法士:呼吸
その他:地域ケア会議推進リーダー,介護予防推進リーダー,フレイル対策推進マネージャー,呼吸ケア指導士

【社会活動】

2009年~2015年 長崎市生涯元気事業 講師・運営
2018年~現在 社会福祉法人大分県福祉会 障害者支援施設 うえの園:運動指導・講師
2018年~現在 杵築市週一通いの場 事業効果検証
2020年~現在 大分市個別地域ケア会議 助言者

研究業績

【著書・研究業績等】

・こだわり抜く筋力増強運動, (担当:分担執筆), 文光堂, 2023.
・大分県杵築市における高齢者サロンを活用した「通いの場」の有用性の検討~1年間の縦断的研究~. 大分県理学療法学, 2023.
・Development and Evaluation of Dorsiflexion Support Unit Using Elastomer Embedded Flexible Joint. Journal of Robotics and Mechatronics, 2022.
・フレイル傾向と口腔機能・食生活、心理的要因、および社会的要因との関連. 社会問題研, 2023.
・加齢に伴う生活機能の変化と理学療法. 理学療法, 2021.
・Effects of systematic intervention for chronic obstructive pulmonary disease on follow-up and smoking cessation rates and changes of the pulmonary function: A 7-year longitudinal study in a Japanese rural city. Internal Medicine, 2018